はじめに
2024年10月29日放送の【クローズアップ現代】では、「私の年金足りますか? 女性の“老後リスク”にどう備える」というテーマで、年金不安を抱える女性たちの現状とリスク回避の方法が特集されました。特に、年金だけでは生活が成り立たないことが多い女性たちの老後リスクについて、最新の試算とともに、専門家のアドバイスや支援の選択肢が解説されました。
番組では、女性が年金額が低くなる主な要因として、正規雇用から非正規雇用への転換や、育児や介護によるキャリア中断、男女間の賃金格差などが挙げられました。さらに、年金の繰り下げ受給や再就職による厚生年金の加入など、老後のリスク軽減のための方法も紹介されました。
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女性の年金が少なくなる背景とは?
男女間での年金格差
日本では、年金制度が男性と女性で同等の金額を支給する構造にはなっていません。厚生労働省の最新試算によると、全世代で女性の年金額は男性よりも月に約4~5万円少ないとされています。これは、女性が育児や介護などの家庭責任を負うことが多く、キャリアを中断したり、非正規雇用に移行したりすることが主な原因です。
- 現状
- 男性の年金:月14万1000円(65歳時点での予測平均)
- 女性の年金:月9万8000円(65歳時点での予測平均)
この金額の差は、長いキャリアを持つ女性にとっても大きな負担となり、老後の生活不安が増幅しています。
国の年金制度と女性のリスク
日本の公的年金制度は、1階建ての国民年金と2階建ての厚生年金から成り立っています。国民年金は全国民に加入義務がありますが、厚生年金は会社員や公務員など正規雇用者が中心で、収入や加入期間により受給額が異なります。したがって、収入が低い、または加入期間が短い場合は、年金額が低くなる傾向にあります。
非正規雇用の女性が抱えるリスク
茂木直子さんのケース:非正規雇用が年金に与える影響
神奈川県に住む茂木直子さん(51歳)は、これまで20年以上非正規雇用を続けてきたことから、65歳になっても受け取れる年金額が月10万円に満たない状況です。専門学校を卒業後、正社員として働いていましたが、会社の倒産によって非正規雇用に移行せざるを得なくなりました。以後もさまざまな職場で働いてきましたが、非正規の仕事は安定せず、現在の年金見込み額も非常に少ないものとなっています。
- 非正規雇用のリスク要因
- 厚生年金の加入期間が途切れがちになる
- 社会保険料が低く、受給額が少なくなる
- 雇用が不安定で、退職金や老後資金の積み立ても少ない
離婚による女性の老後リスクの増加
また、離婚によって老後のリスクが急激に増す女性も少なくありません。結婚していた間は夫の年金で生活できても、離婚後は一人分の年金で生活しなければならず、特に50代以降で離婚した場合、老後に備える余裕がほとんどないケースも多いです。
老後資金不足の具体的な試算とリスク回避策
老後に必要な資金の試算
老後を年金だけで暮らす場合、生活費が月14万5000円として計算されると、80歳で約1600万円、90歳までで約2800万円不足するという試算も出ています。この資金不足をどのように補うかが、女性の老後を考えるうえで非常に重要です。
- 不足額の試算例
- 80歳で約1600万円不足
- 90歳で約2800万円不足
年金を増やすための方法
ファイナンシャル・プランナーの加藤葉子さんによれば、老後のリスクに備えるために年金を増やす方法として、次のような方法が推奨されています。
- 厚生年金に加入し、長期間働くこと
厚生年金に加入することで、年金額が増える可能性が高まります。今後、企業も努力義務として70歳までの雇用を促進しているため、長期の就業が年金対策となります。 - 年金の繰り下げ受給
65歳での受給を70歳または75歳まで繰り下げることで、受給額が増加します。1か月繰り下げるごとに年金額が0.5%ずつ増加するため、増額を図りやすい方法といえます。 - 公的年金シミュレーターの活用
現在の生活費と退職後の生活費を比較し、必要な老後資金をシミュレーションすることで、早めに備えることが可能です。
女性が老後リスクを軽減するための企業の役割
企業が取り組むべき賃金格差の是正
企業側も、女性の年金を底上げするために賃金格差の是正に取り組む必要があるとされています。特に非正規雇用者に厚生年金を適用する企業も増えていますが、これにはコスト負担が伴います。従業員の待遇改善は企業成長にも寄与するため、企業全体で働きやすい環境を整えることが求められます。
キャリアアップ支援と安定雇用の促進
7年前に創業したIT関連企業「はたらクリエイト」では、全員がパートから始まりましたが、現在では社員の約4割が厚生年金に加入できる契約社員・正社員に転換されています。パート社員のキャリアアップ希望を調査し、正社員登用の機会を提供することで、従業員の将来の年金額にも貢献しています。
自分の年金見込み額を把握する方法
まずは、自分が将来受け取れる年金の見込み額を確認することから始めましょう。具体的な確認方法として以下の手段があります:
- 「ねんきん定期便」の活用
日本年金機構から毎年送られてくる「ねんきん定期便」は、自分の年金見込み額を確認するために非常に便利な資料です。自分の加入状況や将来の見込み年金額が記載されていますので、受け取ったら必ず確認しましょう。 - 「ねんきんネット」を活用する
インターネットでアクセスできる「ねんきんネット」は、詳細な年金の試算ができるオンラインサービスです。年金受給額を月ごとや年ごとでシミュレーションしたり、働き方や退職後のライフプランに応じた年金額の変化を具体的に確認することが可能です。 - 公的年金シミュレーターを活用する
厚生労働省の公的年金シミュレーターを利用することで、退職後に必要な生活費と実際の年金収入との差額をシミュレーションすることができます。年齢や年収、家族構成を入力すると、現在の生活費と将来の必要な生活費のギャップを把握することができ、老後の計画が立てやすくなります。
厚生年金に長く加入するための工夫
厚生年金への加入期間が長いほど、受給額が増えるため、働き方を見直すことも重要です。以下のポイントを参考にしましょう:
- 70歳まで働ける環境を選ぶ
現在、70歳までの雇用確保を企業に努力義務として促進する政策が進められています。できるだけ長く厚生年金に加入することで、将来の年金額が増加します。定年退職後の再雇用制度や転職などを活用し、厚生年金に加入し続ける選択肢を検討しましょう。 - 短時間勤務でも厚生年金加入の対象となる働き方に
2024年からは、従業員が51人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金が適用されます。パートやアルバイトなどの非正規雇用でも厚生年金に加入できる条件が整いつつあるため、加入要件を満たす働き方を選ぶとよいでしょう。 - キャリアアップで収入を増やす
収入が上がるほど厚生年金の受給額も増加します。スキルアップや資格取得などでキャリアアップを目指し、正社員や契約社員として収入を上げることも、将来の年金額増加につながります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や積立型保険などの民間の老後資産形成方法
年金だけで不足する場合に備え、iDeCoや民間の積立型保険を利用して老後資金を確保する方法も有効です。以下にその詳細を紹介します。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用
iDeCoは、個人が任意で加入できる積立型の年金制度で、運用益が非課税になるというメリットがあります。月々5000円から積立が可能で、掛金の金額は自営業者、会社員、公務員などの職業によって異なります。60歳になるまで引き出しができない点に注意が必要ですが、老後資金をしっかり確保したい方におすすめです。 - つみたてNISAなどの積立投資制度の活用
つみたてNISAは、年間40万円までの投資ができ、運用益が非課税になる制度です。老後の資金形成に役立つだけでなく、長期的な資産運用にも適しています。iDeCoと併用することで、老後の資金を分散して確保することができます。 - 民間の積立型保険への加入
民間の積立型保険には、年金保険や終身保険などさまざまな種類があり、老後資金を効率的に準備する手段として役立ちます。契約期間中に解約が難しいデメリットもありますが、毎月の積立によって計画的に資金を準備することが可能です。
女性が老後の年金不安を解消し、安心して生活するためには、まず年金見込み額を把握し、必要に応じて老後資金の積立や、厚生年金に長く加入するための働き方を検討することが重要です。また、iDeCoやつみたてNISAといった資産形成の選択肢を活用することで、年金不足を補うことが可能です。年金シミュレーションや資産運用に関する情報を早めに集め、計画的な準備を始めてみましょう。
読者コメント・質問コーナー
今回ご紹介した女性の年金リスクとその備えについて、皆さんのご意見や経験をコメントで教えてください。「非正規からのキャリアアップについて考えたい」「繰り下げ受給に興味がある」など、年金について知りたいことや疑問もお寄せください。また、年金以外での老後資金の確保や生活費の工夫についてもシェアしていただけると、他の読者の参考になります。
まとめ
【クローズアップ現代】の放送では、女性が抱える年金不安と老後リスクについて解説がありました。日本の年金制度は男女での給付格差が存在し、特に非正規雇用や結婚・出産を機にキャリアを中断した女性にとっては大きな課題です。長く働き続けることや、繰り下げ受給、キャリアアップの選択肢を持つことが重要だとされています。また、企業側も従業員の待遇改善を進め、年金リスクに備える環境作りが求められています。
女性が安心して老後を迎えるためには、今からでも準備が可能です。この記事が少しでも役立つ情報となれば幸いです。
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