外はカリッ!中はふわっ!笠原流お好み焼きの秘密とは?
お好み焼きを家で作ると、「ベチャッとしてしまう」「焼き加減が難しい」「ひっくり返すと崩れる」など、なかなかお店のようにうまくいかないという人は多いのではないでしょうか?
そんな悩みに応えるのが、笠原将弘さんが披露した“笠原流お好み焼き”。実は彼にとって、お好み焼きは子どもの頃から慣れ親しんだ“得意料理”なのです。
小学生時代、地元のお好み焼き屋でアルバイトをしていた笠原少年。そこで出会った“おばちゃんの味”こそ、彼の料理の原点でした。シンプルながらも計算された混ぜ方と焼き方、そして素材への丁寧な向き合い方。その昭和の味を現代の家庭で再現するのが、今回紹介する笠原流のレシピです。
「粉もんは、しっかり焼かないと美味しくない」という師匠の教えを胸に、家庭のフライパンで“外カリ中フワ”の極上お好み焼きを焼き上げます。
出汁と長芋でつくる「ふわふわ生地」の秘密
笠原流お好み焼きの最大の特徴は、生地に出汁(だし)を使うこと。単に水や牛乳で溶くのではなく、鰹節と昆布で丁寧に取った出汁を使うことで、旨味が何倍にも膨らみます。
お好み焼きの香ばしさに、和風だしの深い風味が重なり、口に入れた瞬間に“上品な味”が広がるのです。笠原さんは「どんな料理にも出汁を生かすのが日本の味」と語っています。粉料理でも例外ではありません。
さらに、長芋の使い方にもこだわりが。通常はすりおろして使うことが多いですが、笠原さんは包丁で叩いて“少し粒を残す”のがポイント。これにより、焼いたときに空気を含んだふんわり感と、自然な粘りの両方を出せるのです。
この“とろろ粒”が、外はカリッ、中はふわふわという理想の食感を支えています。
キャベツの扱いで決まる!食感と甘みのバランス
キャベツはお好み焼きの命。笠原さんは、粗みじん切りを推奨しています。細かすぎると水分が出すぎてしまい、逆に大きすぎると火が入りづらくなります。1センチ角より少し小さいくらいのざく切りがちょうど良いサイズ。
また、混ぜるタイミングも重要です。キャベツを早く生地に混ぜ込むと、時間とともに水分が出てベチャッとした仕上がりになってしまいます。
笠原流では、焼く直前に具材と生地を合わせることが鉄則。ざっくり混ぜるだけでOKです。練るように混ぜると空気が抜けてしまうので、あくまで「生地を持ち上げながら、ふんわり合わせる」イメージで。
さらに、紅しょうがと桜えびの存在も欠かせません。紅しょうがは生地の中に彩りと酸味をプラスし、桜えびは香ばしさを引き立てる役割を果たします。天かすも加えれば、油のコクが全体をまとめ、まるで専門店のような味わいに。
焼き方の極意:中火キープと“押さない勇気”
生地が完成したら、次は焼き方。
笠原流では、中火をキープすることを何よりも大切にしています。強火だと表面だけ焦げて中が生焼け、弱火だと水分が出てベチャつく。程よい中火を保ち、両面をじっくり焼くのが理想です。
また、フライパンのサイズにも注意が必要。家庭用のフライパンなら、直径12〜15センチ程度に収めると、ひっくり返しやすく崩れません。
フライパンにサラダ油をしっかり馴染ませ、温まったら生地を流し入れます。スプーンの背で形を整えながら、フライパンを軽く回して“円形を描く”ように生地を均一に広げましょう。
焼き始めたら、5〜6分は触らないこと。何度も動かすと崩れやすく、焼き色も均一につきません。片面にしっかりと焼き色がついたら、ヘラを使って勇気を持ってひっくり返します。
ここで最大のポイント。裏返した後は押さえないこと。
よくやってしまいがちな“ギュッと押す”行為は、せっかくの空気を逃してしまい、ふわふわ感が失われてしまいます。笠原さん曰く、「お好み焼きは呼吸している。押さずに待てば、勝手に美味しくなる」とのこと。プロならではの言葉ですね。
仕上げのひと工夫:再び裏返して香ばしく
裏面が焼けたら、もう一度ひっくり返して最初に焼いた面を下に。これで表面がさらにカリッと香ばしく仕上がります。
最後にお皿に移し、お好みソースをたっぷり塗り、かつお節・青のり・マヨネーズをトッピング。ソースがじんわりと熱で香り立ち、ふんわり立ち上る湯気とともに、家庭の台所がまるでお好み焼き屋のような香りに包まれます。
“下半身で焼く”料理人の哲学
笠原さんがよく語るのが、「料理人は下半身で焼け」という名言。
ひっくり返す瞬間、手先だけでなく膝と腰のバネを使うと、力が分散して安定します。料理は全身で行う作業。フライパンを動かす姿勢ひとつで、仕上がりの美しさが変わるのです。
小学生の頃、バイト先のおばちゃんに「腰を入れて焼け!」と教えられたその言葉が、今でも彼の中で生き続けています。家庭料理にも“職人の所作”を大切にする、それが笠原流の神髄です。
笠原流お好み焼きレシピ(2枚分)
材料 | 分量 |
---|---|
豚こま肉 | 150g |
キャベツ | 1/6個 |
長芋 | 60g |
卵 | 1個 |
天かす | 10g |
桜えび | 5g |
紅しょうが | 20g |
薄力粉 | 80g |
出汁(だし) | 80cc |
塩・コショウ | 少々 |
サラダ油 | 適量 |
お好みソース・かつお節・青のり・マヨネーズ | 各適量 |
【作り方】
① キャベツを粗みじん切り、長芋は叩いてとろろ状に。
② 豚こま肉を細かく切り、塩・コショウで下味を。
③ ボウルに出汁・卵を混ぜ、長芋を加える。薄力粉を半量ずつ入れて混ぜる。
④ キャベツ・天かす・紅しょうが・桜えび・豚肉を入れてざっくり混ぜる。
⑤ フライパンに油を引き、中火で両面をじっくり焼く。
⑥ 最後にもう一度ひっくり返してカリッと焼き上げ、トッピングを乗せて完成。
まとめ:記憶の味が今も生きる、笠原流の“粉もん哲学”
笠原さんの“お好み焼き”は、単なる料理ではありません。小学生のころ、アルバイト先の鉄板の前で学んだ「焼くことの楽しさ」と「丁寧な手仕事」が、今も彼の中に息づいています。
料理には、教科書では学べない“温度”があります。手のひらの感覚、焼き音、香り、そして食べる人の笑顔。笠原流の一枚は、それらを全部ひとつの鉄板の上にのせた、“記憶と技の結晶”です。
家庭で焼く一枚でも、少しの工夫と心の余裕があれば、きっとお店の味に近づきます。
あなたのキッチンでも、ぜひ笠原流の「外カリ中フワ」を体験してみてください。家族の笑顔がきっと広がります。
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