春野菜と豚バラ肉のしょうゆと砂糖と酒の炒りあげレシピ
4月1日のNHK「きょうの料理」でも紹介されたこの一皿は、新たけのこ、アスパラガス、豚バラ肉を使い、いったん湯を通した肉をしょうゆ・砂糖・酒でからめて仕上げる料理です。見た目はとても静かですが、中身はしっかりしています。春野菜のやわらかさ、豚バラのうまみ、木の芽の香りが重なるので、「やさしいのに物足りなくない」と感じやすいのが大きな魅力です。たけのこは春らしい食材の代表で、アスパラガスも春から初夏に旬を迎えます。さらに木の芽は山椒の若芽で、春を感じさせる香りとして昔から親しまれてきました。つまりこの料理は、味だけでなく季節そのものを食べる料理でもあります。
材料
・新たけのこ(ゆでたもの) 1本(180~200g)
・グリーンアスパラガス 2本
・豚バラ肉(薄切り) 120g
・木の芽 適量
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ1
・砂糖 大さじ1
・塩 少々
・こしょう 少々
作り方
・新たけのこは食べやすく切る
・アスパラガスは根元が堅ければ皮を薄くむき、食べやすい長さに切る
・豚バラ肉は2~3等分に切る
・鍋に湯を沸かし、たけのこを入れる
・煮立ったらアスパラガスを加える
・再び静かに煮立ったら豚肉を加え、さっと火を通す
・豚肉だけをフライパンに取り出す
・たけのことアスパラガスは器に盛る
・フライパンに酒、しょうゆ、砂糖、塩、こしょうを入れて煮立たせる
・汁気をからめるように豚肉をいりつける
・野菜の上に豚肉を重ね、木の芽を添える
この料理が注目される理由は、炒め物なのに油っぽくなりすぎないからです。ふつう豚バラ肉を炒めると脂が前に出やすいですが、この料理では先に湯通しするので、余分な脂が落ちて味がすっきりしやすくなります。そのあとで甘辛い調味料をからめるので、軽さとうまみの両方が残ります。春の食材は味が淡く、香りや歯ざわりを楽しむものが多いので、この「いったん軽くしてから味をのせる」考え方ととても相性がいいです。
鶏むね肉の卵焼きレシピ
鶏むね肉の困りごとは、火を入れすぎると固くなりやすいことです。この料理はそこを正面から解決しています。肉をしっかりたたいて薄く広げ、卵で包むように焼くことで、火の通りを早くしながら、口あたりをやわらかくしています。さらに小麦粉を薄く使うことで、肉と卵がなじみやすくなり、表面もまとまりやすくなります。見た目は素朴ですが、やっていることはとても理にかなっています。
材料
・鶏むね肉(小) 1枚(180g)
・卵 1個
・小麦粉 適量
・植物油 適量
・塩 適量
・こしょう 適量
・好みのハーブやスパイス(タイム、クミンなど) 適宜
・トマトケチャップなど 適宜
作り方
・鶏むね肉は皮をはがし、余分な脂を取る
・厚い部分に切り込みを入れて開く
・肉たたきでしっかりたたいて大きく薄く広げる
・塩、こしょうをふり、好みでハーブやスパイスをのせる
・茶こしで小麦粉を薄くふる
・フライパンを弱火で温め、油をひく
・卵は塩少々を加えて溶いておく
・鶏肉を小麦粉をふった面を下にして入れ、上面にも小麦粉を薄くふる
・火が5~6割ほど通ったら溶き卵を加え、肉の下にも流し入れて包むようにする
・軽く焼き色がついたら返し、少し焼いて火を通す
・好みでトマトケチャップ、しょうゆ、ポン酢しょうゆなどを添える
この料理のよさは、特別な下味に頼らなくてもおいしくなるところです。鶏むね肉をやわらかくする料理というと、長く漬けたり、低温調理にしたり、複雑な工夫を思い浮かべる人も多いです。でもこの料理は、薄くする、粉をふる、卵で包むという基本だけで食べやすくなります。だから料理が苦手な人でも再現しやすく、毎日のごはんに取り入れやすいのです。
春野菜と豚バラ肉の炒りあげをおいしく作るコツ
おいしく作るいちばんのコツは、野菜と肉を同じ鍋で順番に扱うことです。たけのこを先に温め、次にアスパラガス、最後に豚肉と進める流れには意味があります。火が入りにくいものから順に入れることで、全部を同じくらいのよい状態にそろえやすくなるからです。しかも豚肉はゆですぎず、さっと火を通すだけなので、固くなりにくくなります。
もうひとつ大事なのは、調味料を煮立たせてから肉にからめることです。最初から野菜と全部を一緒に煮るのではなく、豚肉だけをあとで甘辛くまとめるので、野菜の青い香りやたけのこの風味が消えにくいです。ここがこの料理の上品さにつながっています。全部を同じ味に染めるのではなく、野菜は野菜、肉は肉として味の役割を残しているのです。
比べてみると、ふつうの豚バラ炒めはフライパンで肉を炒め、その脂で野菜も炒めることが多いです。それは香ばしさが強い反面、春野菜のやわらかな感じが少しかき消されることもあります。この料理は逆で、春野菜を主役にして、豚バラはうまみ担当として重ねています。だから見た目も味も軽やかで、春の食卓になじみやすいのです。
鶏むね肉をしっとり仕上げるポイント
いちばん大切なのは、肉をたたいて薄くすることです。厚いままだと中心まで火を入れるのに時間がかかり、そのあいだに外側が先に固くなりやすくなります。薄く広げれば短い時間で火が入り、食感もやわらかく感じやすくなります。紹介記事でも、たたいて繊維を切ることでしっとりやわらかくなること、小麦粉が肉と卵をくっつける役目をすることが示されています。
そして、卵をあとから流して包むのも大きなポイントです。卵はただの飾りではなく、鶏むね肉の表面をやさしく覆ってくれます。これによって、口に入れたときに「パサパサの肉だけ」が直接当たりにくくなり、全体がまとまって感じられます。つまり、しっとり感は水分量だけでなく、食べたときの一体感でも決まるということです。
さらに、味つけを後から自由にできるのも便利です。タイムやクミンのようなハーブ・スパイス、ケチャップ、しょうゆ、ポン酢しょうゆなどで印象を変えられるので、同じ作り方でも飽きにくいです。濃い下味を最初からつけないぶん、昼は軽く、夜はしっかり、というように食べ方を変えやすいのも、この料理の使いやすさです。
土井善晴流シンプル調理の魅力
この2品を見ていると、材料を増やすより、扱い方を変えるという考え方がよくわかります。春野菜と豚バラ肉の料理では、先に湯通しすることで軽さを作り、鶏むね肉の料理では、たたいて広げることでやわらかさを作っています。どちらも派手ではありませんが、食材の弱点を小さな工夫で助けています。これが多くの人に響く理由です。
こうした料理が注目される背景には、今の家庭料理で「手間をかけすぎず、でも雑にはしたくない」という気持ちが強いこともあります。調味料を何種類も使わなくても、切り方、火の入れ方、順番で味は変わります。だからこの2品は、豪華さよりも料理の基本の力を思い出させてくれます。特に、春野菜の料理は季節感、鶏むね肉の料理は節約と食べやすさの両方があり、ふだんのごはんにそのままつなげやすいです。
小学生にもわかる言い方をすると、すごいのは「魔法の調味料」ではなく、どうさわるか、どう火を入れるかです。料理はむずかしい秘密があるように見えても、実は「薄くする」「さっと火を通す」「別々に仕上げる」みたいな、目で見てわかる工夫でかなり変わります。だからこの2品は、レシピそのものだけでなく、ほかの料理にも使える考え方を教えてくれるのです。
家庭で再現しやすい基本の味つけ
春野菜と豚バラ肉の料理の中心は、しょうゆ・砂糖・酒です。この3つは和食の基本に近い組み合わせで、覚えやすく、家にもあることが多いです。しかも今回の配合は、酒大さじ2、しょうゆ大さじ1、砂糖大さじ1が目安なので、甘さ・塩気・香りのバランスをとりやすい形です。ここから少し甘め、少し薄めと、自分の家の好みに寄せていけます。紹介記事でも、分量は適宜加減してよいとされています。
この味つけが使いやすいのは、春の淡い味を消しにくい甘辛さだからです。みそだれやにんにく強めの味つけだと、たけのこやアスパラの軽やかさが隠れることがあります。でもしょうゆ・砂糖・酒なら、豚肉にはちゃんと合いながら、野菜の香りもまだ残しやすいです。だから「春らしさをちゃんと感じる甘辛味」になりやすいのです。
一方、鶏むね肉の卵焼きは、あえて味つけを固定しすぎないのが特徴です。これも家庭向きです。ケチャップなら子どもも食べやすく、しょうゆやポン酢しょうゆならごはんに合いやすいです。ハーブやスパイスを少し足せば大人向けにもなります。つまりこの料理は、レシピがひとつでも、食卓では何通りにも広がります。基本の形がしっかりしているから、応用がきくのです。
今回の2品をまとめると、ひとつは季節を食べる料理、もうひとつは素材の弱点を上手に助ける料理です。どちらにも共通しているのは、材料や工程を増やしすぎずに、おいしさの理由をちゃんと作っていることです。ただ作るだけで終わらず、「なぜこの順番なのか」「なぜこの形なのか」を知ると、食べたときの納得感がぐっと深くなります。



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